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人生の教えに満ちた『宇宙刑事ギャバン』のオープニング

 1982年3月5日、『宇宙刑事ギャバン』(以下、ギャバン)の放送が始まりました。新たに誕生した全身が銀色に輝くヒーローの姿は、当時の少年たちの目をくぎ付けにしました。38年が経過した今も、串田アキラ氏が歌うオープニングテーマ『宇宙刑事ギャバン』に力をもらっているライターの早川清一朗さんがギャバンの魅力について語ります。

「蒸着!」

 主人公、一条寺烈役を務めた大葉健二氏の力強い掛け声は、今も脳裏に焼き付いています。

『宇宙刑事ギャバン』の放送が始まると、すぐに筆者をはじめとした子供たちはギャバンごっこをするようになりました。「とぉう!」と叫んで飛び込みながらのギャバンパンチやアルミホイルの芯をレーザーブレードに見立ててのギャバンダイナミック、サイバリアンに乗るときの超カッコイイ前傾姿勢や蒸着のプロセスまで、ありとあらゆる真似をしていた記憶があります。それほどギャバンの存在は衝撃的であり、魅力にあふれていたのです。

 ギャバンの魅力は外見やアクションだけではありません。串田アキラ氏が歌うオープニング『宇宙刑事ギャバン』は、渡辺宙明氏が作り上げた曲だけではなく、山川啓介氏が書き上げた詩の内容も、子供をひとりの人間として考えている、本気の内容でした。
 
「男なんだろ? ぐずぐずするなよ 胸のエンジンに 火をつけろ」
「若さ 若さってなんだ 振り向かないことさ」
「愛ってなんだ ためらわないことさ」

 残念ながら今の筆者にすでに若さはありませんが、それでもこれらの歌詞は、困難にぶつかりくじけそうになったとき、筆者を支え続けてくれています。

 また二番の歌詞は放送から大分経ってから知ったのですが、「悪い奴らは 天使の顔して 心で爪を研いでるものさ」 という部分があります。人生ではこういう人間に遭遇することもしょっちゅうです。『ギャバン』そして山川氏は、子供たちに向けて、大人になるための心構えを教えてくれたのかもしれません。

東映ヒーローを救った『宇宙刑事ギャバン』

 実は『ギャバン』が放送された時期、東映のヒーロー番組は危機に瀕していました。最盛期には8作品が放送されていましたが、『仮面ライダー』シリーズが1981年の『スーパー1』で終了し、残るは『太陽戦隊サンバルカン』『大戦隊ゴーグルファイブ』といった、スーパー戦隊シリーズ1本のみとなってしまっていたのです。

 この危機を救うため立ち上げられた企画のなかで、形になった数少ない作品のひとつが『ギャバン』なのです。この時、東映とTV局、スポンサーの共通認識となっていたのが「仮面ライダーとは異なる単体ヒーローの創造」でした。

 ここで大きな力を発揮したのが、ビジュアルイメージを担当していたバンダイの村上克司氏。超合金シリーズの第1号である『超合金マジンガーZ』の発案者です。要望を受けて村上氏が起こした“剣を持っている銀色のメカニカルなヒーロー“のデザインが、ギャバンの原型となりました。

 しかし問題はそこからでした。銀色に輝くメタリックスーツは完成したものの、反射した日光がカメラに入ってしまい、野外での撮影は難しいことが分かったのです。そこで脚本家の故・上原正三氏がひねり出したのが、魔空空間でした。

「魔空空間にひきずりこめ!」の声と共にギャバンが引きずり込まれた異様な空間は、実はメタルスーツに光が反射しないように調整された撮影場所だったのです。

 また、『ギャバン』の変身シーンはポーズを取った次の瞬間に変身が完了しますが、従来のヒーローでは「なんで変身中に敵は攻撃してこないのか」とツッコミが入るところを、「実は変身プロセスは0.05秒で人には見えない」設定にして、「では、蒸着プロセスをもう一度見てみよう」とスローで蒸着シーンを再生することにおり、ツッコミを回避しつつ近未来的なイメージを与えることができる、画期的なものでした。

 さまざまな新機軸が盛り込まれた『ギャバン』に感銘を受けたのは、日本の少年だけではありません。映画監督のポール・バーホーベンは『ロボコップ』製作の際に村上氏に『ギャバン』からのデザイン引用許諾を求める手紙を送り、村上氏はこれを快諾しています。

 多くの人が汗を流し、知恵を絞り、熱意をぶつけて作り上げた『ギャバン』は、多くの子供を熱狂させ、メタルヒーローシリーズ誕生の原動力となりました。危機に陥ったとき、最も大事なことは何か、『ギャバン』が教えてくれたのは……。

「あきらめないことさ!」

3/5(木) 8:10配信
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200305-00010001-magmix-ent
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~一言コメント~

蒸着!とか衝撃ですよね。あとやっぱり歌が最高良い!